家計調査で読み解く21世紀の美容市場:理美容代減少と美容用品時代の到来

「美と健康の時代」といわれた21世紀も四半世紀が過ぎ、「美」は「健康」と並び人々の最大の関心事となっています。

現在は「美容の時代」であることは紛れもない事実ですが、家計調査から読み解くと、正確にはヘアの理美容以外の「他の理美容」の時代であり、美容電化機器や化粧品といった「理美容用品」の時代であることがわかります。さらに言えば、理美容は縮小・衰退傾向にあります。21世紀は、理美容を除いた「美容の時代」といえるでしょう。

『家計調査』には、「理髪料」「パーマネント代」「カット代」の理美容室での支出を対象とした項目と、「他の理美容代」という4つの美容サービス支出項目があります。「他の理美容代」には理美容室メニューのヘアカラーも含まれますが、大きな割合を占めるのはエステティック料金、ネイル代、アイビューティ代、大型浴場施設の入場料などです。そのほかにも、着付け・化粧代、セット代、なでつけ代などがあります。

支出金額(名目)で見る四半世紀の動向

『家計調査』(二人以上の世帯)における2000年から2024年までの支出金額(名目)を示したのが上のグラフです。

理美容代は理美容店のメインメニューである「理髪料」「パーマネント代」「カット代」を合計した数値で、緩やかに減少しています。2000年は1世帯あたり2万3,712円だった年間支出が、2024年には1万4,324円となり、9,388円(40%)減少しました。世帯の構成人数も減っていますが、それ以上の減少幅です。

美容係数でみる四半世紀の動向
西暦 理美容代 他の理美容代 理美容用品
2000年 62.3 36.8 117.4
2024年 39.8 67.1 170.7
−22.5 +30.3 +53.2
単位:%(例)。モバイル端末では横スクロール可能。

項目別では「理髪料」は微減、「パーマネント代」は大幅減、「カット代」は微増であり、とくに「パーマネント代」の減少が全体に大きく影響しています。

一方、「他の理美容代」は2000年の1万4,002円から2024年には2万4,160円(+1万158円・+73%)に大きく伸びました。「理美容用品代」も4万4,713円から6万1,489円(+1万6,776円・+38%)に成長しています。これらの数値は「21世紀は美容の時代」であることを象徴しています。

美容係数で見る四半世紀の動向

家計調査では、消費支出全体は1世帯の構成人数によって変動します。近年は「二人以上の世帯」の人数が減少し、消費支出も減少傾向です。社会情勢も影響し、新型コロナ流行時には消費支出が大きく変化しました。

美容係数は消費支出に占める割合(1万分比)を示します。この動向も支出金額の推移と同様の傾向を示しています。「理美容代」の美容係数は-22.5ポイント(-36%)と低下する一方、「他の理美容代」は+82%、「理美容用品」は+45%と大きく伸びています。

美容係数でみる四半世紀の動向
西暦 理美容代 他の理美容代 理美容用品
2000年 62.3 36.8 117.4
2024年 39.8 67.1 170.7
−22.5 +30.3 +53.2
単位:%(例)。モバイル端末では横スクロール可能。

「21世紀は美容用品の時代」

「理美容代」が「他の理美容代」に抜かれたのは2012年で、それ以降は差が広がっています。「他の理美容代」にはヘアカラー代が含まれ、理美容室の支出は「理美容代」ほど減っていない可能性もありますが、ヘアカラーを加えても減少傾向にあるとみられます。

また、「理美容代」と「他の理美容代」を合わせた美容サービス支出は、2000年の3万7,714円から2024年の3万8,484円へと770円(2%)の微増にとどまりました。一方、美容用品は4万4,713円から6万1,489円へと1万6,776円(38%)増加しています。背景には美容メーカーによる需要喚起や、消費者のセルフ志向の高まりがあると考えられます。

世帯構造の変化にも注目

本稿は「二人以上の世帯」のデータを使用していますが、世帯構造そのものが変化している点にも注意が必要です。家族数は年々減少しており、それに伴って支出金額も減少する傾向があります。「二人以上の世帯」数は2015年頃まで増加していましたが、近年は減少に転じています。

さらに、単身世帯の割合が増え、消費行動にも変化が見られます。単身世帯の中でも20〜30代の若年層と高齢層では消費行動が異なり、今後の美容市場動向を考える上で重要な要素となります。